生徒会長様の、モテる法則
6-3 理由
「お!仁東どうした!お前の背後に死神が見えるぜ。バン解!」
「委員長の背後には虚(ホロウ)が見えるよ」
「マジか、助けてくれ」
「いやだ」
もう、朝から元気いっぱい委員長を相手している暇はない。
下駄箱で偶然鉢合わせた私達は、ほぼ同時に外履きを上履きに履き変えて教室に向かった。
いかにもスポーツ大好き!な委員長の容姿は驚くほど健康的で、短く切られた黒い髪はワックスの力を借りて四方に立っている。
聞けば、バレーボール部のキャプテンらしい。
だからあの熱血漢か…。
「元気ねぇなぁ、どーした?お前らしくもない」
一足先に夏を感じさせる半袖のYシャツから伸びた長い手が、私の肩を軽く叩いて弾む。
適度についた筋肉は、少しだけ焼けていて逞しい。
男らしいというのはこういう事だ。
ただ細身であるため、ガチガチの筋肉質に見えない所がまた良いところだと思う。
「なんかあったら、相談に乗るぜ?」
――…お兄さん…!
白い歯が光ってみえた。
アパタイト…!
輝く爽やかな笑顔の彼を見て、一気に心が浄化されるのを感じる。
音を立てて消えていく倦怠感。
委員長!私の兄貴になってくれ!
「うん!大丈夫!それより今日から一日中文化祭の準備なんだっけ?」
気を取り直して、階段を昇りながら私は今日の話題をふった。
とりあえず落ち込んでても仕方ない!頑張れ私!
文化祭の為に一週間勉強しなくていい、楽園!
夢のよう!物理なくなれクソやろう!
「これから一週間が勝負だからな」
委員長がボソリと呟いた。
やはり技術学芸会同様に学園祭に対する意気込みは凄まじい。
私も、しっかりしなければならないようだ。
「そういや接客衣装何がいい?一応一通り民族衣装は取り寄せられそうなんだけど」
「中国以外でお願いします!!」
「?別にいいけど何で?」
「チャイナドレスのスリットが社会の窓に見えるからです!!」
「??」
葵の毒牙にかかってたまるものか。