生徒会長様の、モテる法則


要冬真の着ているものは、ナチス軍をイメージしたものらしい。

他にも日本物の白い軍服を着た人や、北欧系のナポレオンのような軍服の人も居るが、やはり群を抜いて似合っているのはヤツだった。


普段は偉そうだが、今回は接客な為本人の“俺様オーラ”はほぼ皆無と言って良い。

その相乗効果で女生徒のテンションは90°で上がるわけだ。



「リン、ほらほら接客しないと!」


裏のキッチンから顔を出したのは、銀の盆に飲み物を乗せたハルだった。
衣装はスコットランドのキルト。
可愛らしい黒のベレー帽、蝶ネクタイにジャケット。
チェック柄のスカートはプリーツに畳まれておりウエストをベルトで固定してある。


はたから見ればスカートだが立派な民族衣装だし、童顔のハルには似合っていた。

スカートから覗く細い足は、悔しい事に綺麗だ。


「朝からこんな混むなんてー!とうまのせいだ!」


「うるせー人のせいにするな」



私の背後に影がかかり、振り下ろされた声は接客の反動でやや不機嫌だ。
要冬真は盆を脇に抱え、右手に伝票を持ちハルの隣をすり抜けてキッチンに入っていく。

隙間から見えるシンクや人の影は忙しそうに左右に行ったり来たりしていた。
朝から全力か…。


と言ってもその波に一足遅れた私は何をすればいいのか分からない。


辺りを見回していると、サリー姿の撫子が大きな看板を持って早足に此方へ歩いてきた。


「なにその看板」

「宣伝よ!宣伝!あんたは午前中接客!ほらまた来たわよ、ご案内しなさい!」




早口でまくし立てられ“従業員用出入り口”から出て行った彼女に小さく手を振り、後ろで待っていたお客に振り返り愛想笑いを浮かべた所で、私の思考は完全に一時停止した。


笑顔のまま。



「お、かわえぇなぁ鈴夏」


「一週間ぶりだね、鈴」



H組の歩く18禁。




「い、いらっしゃいませ」




口元が引きつるのが、自分でもよく分かる。
ドS番長・桐蒲葵と、何かと絡んでくる星南右京。

二人同時に来るなよめんどくさい。

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