生徒会長様の、モテる法則





「なんじゃ冷たいのぅ。鈴夏ん事やから放送聞かんで、自分が鬼や気づかん思てわざわざ教えにきてやったんに」


「…、どゆこと?」


「せやから鬼ごっこの、“鬼役”。入る時そゆ希望を聞かれると思うんやけど。“鬼やってみませんかー?”て、聞かれんかった?」



「いや、聞かれてない一切…」




『逃げ切れたら、ネガ返してあげるよ』




あ…。




「葵ぃぃぃ!殺す!」

どこがランダムだ!
必要な質問もせず勝手に鬼にしやがって!


「でも逃げ切れば年間パスじゃ。このホール結構広いし隠れる場所もぎょうさんあんで。15分間頑張りぃや」


微笑み私の肩を叩いた右京が憎たらしい。
私が睨み付けると、早よ逃げや。と付け加えて去っていった。
暗がりのわき道に消えていく彼の背中を無言で見送り思わず出たため息を両手でなぎ払い、遠方を一点に見つめたままの彩賀さんに声を掛ける。


「どうしたの?」


「陰から誰か見てますわ。鈴夏さん、早く逃げてください」



「え?」



「鈴夏さんがドコの馬の骨とも解らぬ男にかっ浚われるなんて我慢なりません」




いや!
なんかビミョーに違う気がするけど…!
彩賀さんはヒールの高いパンプスを脱ぎ捨て裸足になり、私に背を向けて一度だけ振り返る。

こちらの動きに気付いたのか、建物の隅に隠れていた数人の男が飛び出して来た。




「ここは私に任せて!お逃げください!」




おおお!
どこかで見たような映画のワンシーン!
カッコいい!
チャイナで私の前に立つ彩賀さんの威厳というか覚悟というか、迫力はとにかく物凄い。




YACCHIMAINA!



ですね!!
(違います)



「…あ、ありがとう!」




彩賀さんに背を向けて、出来るだけ全速力で駆け出した。
鈍い衝撃音と男が呻く声に恐る恐る振り返ると背筋をピンと伸ばしてパンプスを片手で持ち上げる逞しい影が目に入る。



カッコいい!!




私が惚れちまいそうだよ!


いやいや…とにかく!
ネガ奪回しますよ私は!


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