生徒会長様の、モテる法則


『あおいちゃんが、そんなことするわけないでしょう!』




当時の私は、かなり泣き虫だった。
それはもう、フォロー出来ないくらい。


幼稚園中に広まった噂を撤回する為に、泣きながら全教室飛び込んで行った。

結局、近所の野良犬が犯人だと分かった時には、みんなが葵に謝りにきたけど。




――…あの時からかな…、葵が強くなりだしたの




“すず、おれ強くなるよ。すずは誰にもなかせない”



「…、ん?ギャァァア!」



今からは考えられない葵の過去の言葉に引っかかり、思考が一瞬停止すると同時に背後から人の気配を感じてジャンプして受け身を取りながら一回転し起きあがる。

アブネェェ!


まさか避けられると思っていなかったのか、後ろから羽交い締めにしようとした両手が虚しく宙で揺れている。
その指先が我に返る瞬間、私は立ち上がり距離を取るために走り出した。



「ちっもう少しだったのに!おい待てー!」



「誰が待つかアホ!」



赤の他人に暴言を吐いて大通りに出ると、前方から私を見つけて走り出す人の影が見えた。


数人。



「うわ!最悪!」



後ろからも前からも!



「どけぇぇぇ!」



腰を落として突進してきた男の鳩尾に軽く蹴りを入れ、右から伸びてきた手を両手で思い切り掴み相手の勢いを利用して後ろからやってきた男にぶつける。

二人の男が激突して地面に倒れるのを視界の隅で確認して、私は彼等から距離を広げるように足を早めた。


レンガ造りの家が立ち並び、アンティーク彫の玄関だったりお洒落な街並みだったり、本来ならばゆっくり見て歩くべきなのだろうがそんな余裕はない。

途中見えた十字路で右折しようとしたが、少しずつ大きくなる影が見えてやむ終えず直進。



もう一度振り返って背後を確認すると、充分距離には余裕がある。


「私に追いつきたいならドーベルマンに勝ってからくるんだな!」



ここから一気に引き離して、まいてやりますよ!
ドーベルマンに勝った私を舐めるなよ!


「…、あれ」





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