生徒会長様の、モテる法則
1、私用で話しかける場合、必ず数人で、そして人の多い所で話すこと
2、好きになるのも告白するのも自由。ただし要様が選んだ女子に文句は言わないこと
3、無闇な抜け駆け禁止
4、仕事の邪魔になるような歓声はNG
「…、告白するときも“数人で人が居るところ”じゃないと駄目なの?」
「その通りです。二人きりではどんな手を使うか分かったものではないですから」
ほう…、それで“無闇な抜け駆け禁止”ね…。
何となく納得したような…つまり奴は芸能人のようなものな訳だ。
私はマジマジと紙に書かれた掟を確認した。
「とにかく、転校早々要様に近付くなんて卑怯ですわ!」
「いや、そんなこと言われても…」
私が逃げたって追いかけてくるんだから仕方ないとは思わないか?
言葉で攻め立てる女の子達に反論しようか迷っていると、寒気のするような視線を感じた。
今まで体験したことのない、力強いそれは体中に電気を走らせたように痛く鋭い。
「お止めなさいみなさん」
私がその視線の正体をつきとめる前に、聞こえたのは誰よりも穏やかな声だった。
そちらに顔をあげれば、先程から遠巻きに様子を伺っていたボス。
「仁東さんは転校してきたばかりで右も左も分からないのですから、許しておあげなさい」
花が綻ぶような笑みはまさに絶世の美女だった。
彼女の言葉に、私を取り巻いていた女の子達は一斉に静止して、静かになる。
彼女の合図で、みな屋上の扉へ向かっていった。
恐ろしい影響力。
「それでは、また」
――今度は二人だけで、会いましょう?
彼女が私の前を通る瞬間、誰にも聞こえないように発した言葉を残して。
彼女達は消えていった。