生徒会長様の、モテる法則
「そうか、確かにそうかもしれないね」
葵は目を細めニコリと笑い、腕を組んでから私と要冬真を交互に見た。
まぁ、納得されるのも心外だけどこれでこいつが私に嫌がらせをしなくなれば万々歳なわけですよ。
「鈴は強いよ」
要冬真を見上げ、今日一番の笑みを浮かべる。
細い肩も手伝って葵は本当に綺麗な男だ。
そんな一瞬の儚げな姿が羨ましいと思うほど。
彼は一歩ずつ、ゆっくりと足を進め私達の目の前で止まり目を細めた。
「でも、俺の方が強い」
いつの間にか“僕”と呼ぶようになっていた彼の本性が一瞬だけ姿を表す。
酷く冷静な物言いに、射るような目つきに動けなくなり、暗闇の中に突然白い手が伸びた。
早すぎて、目で追うのが精一杯だ。
何も出来ずに居ると頭を音が出るほどの強さでガッシリ掴まれ身動きがとれなくなり、頭を掴んだのが葵ではなく、要冬真だと理解した時には既に私はヤツの後ろで尻餅をついていた。
――…乱暴者め!
腰をさすりながら顔をあげると、カーキー色の大きな背中が見える。
「あはは、触らせたくもない?」
一瞬見せた冷たいオーラはすっかり消えて、今度はおどけたように葵は笑ってみせた。
ただ要冬真の背中で表情までは読み取れなかったので声色だけでの判断だが。
「僕も大人だからね、生徒会長にあんまり刃向かわない方がいいって言うのはわかってるんだ」
私が立ち上がるのを気配で察したのか、要冬真は目だけでこちらを確認してまた葵へ視線を戻す。
「鈴の一番弱い所を知ってる僕だからこそ、泣かせる事は容易い。だから鈴の中にどちらが入っていけるかって言ったら、僕だよね」
暗い空に雑音が流れ、耳を澄ませると“怪盗21面相がロンドン市内から完全に姿を消した”という内容の放送が流れた。
つまり、この鬼ごっこは終わったということ。
「どちらが鈴に近いか、よく考えるといいよ。鈴を泣かせることが出来るのは僕だけだから」
――…そのうち、返してもらいにくるよ