生徒会長様の、モテる法則
6-9 嵐の後
「あれー!リン!“怪盗役”の次は“俵役”?」
ハルめ。
今私が地上に足を着いていれば確実に跳び蹴りを食らわせてやったのに…。
私の視界に広がるのは要冬真の背中と好奇な視線と歩いてきた廊下。
ここで訂正すべきは、“歩いてきた”という表現で、実際私は歩いていない。
ちなみに写真のネガは「そんな古いの、残ってる訳ないじゃない」だそうで。
私の苦労はなんだったのか最早解らない。
今回は、完全に葵に踊らされた事になる。
「こいつアホだから足痛めてんの気付いてなかったんだぜ」
担がれた腰からヤツの声が振動して伝わった。
「それで俵担ぎですか」
今度は久遠寺くんの声。
生憎顔は見えず。
「しゃーねーだろ。歩かせるわけにはいかねーし、横抱きしようとしたら暴れやがるんだから」
「ば!あんなお姫様抱っこ恥ずかしいに決まってんじゃん!」
「技術学芸会の時にもやっただろ」
違う!
いやそうだけど全然違うよ!
恥ずかしさはフルマラソンとミニマラソンくらい違う!
自分で言っててよくわかんないけど違うの!
「とりあえず、こいつを保健室連れて行く」
「自分で行けるわ!!離せ!」
両手両足をばたつかせ無理やり要冬真の肩から飛び降りると着地した瞬間に左足に激痛が走った。
「うおぉぉ…。…燃え尽きたぜ…」
「バカだろお前」
これだけ痛かったのに葵から逃げている時に気付かなかったのは、アドレナリン放出量がハンパなかったからだと思う。
しゃがんだまま唸っていると、足元に高いヒールが見えその足を追えば、赤色のチャイナ服と不安げに眉を顰める彩賀さんが目に入った。
「とにかく、保健室に行きましょう」
恐らく私が怪我した事を負い目に感じているのだろう、影を落とす彼女の表情は暗い。
「いや、あ!これ全然大丈夫だから!もうなんか治ったから…痛!」
そんな彼女を元気付けるように私はやや高いテンションで両手を振った。
しかし突然襲った衝撃に顔を歪ませる。