生徒会長様の、モテる法則
痛かったのは足ではない、要冬真に叩かれた頭だ。
ったく!どんだけ乱暴だ!怪我人に更なる苦痛を浴びせるとは!
「痛い!なにすんのよ!」
「寝ぼけた事言ってやがるから、目を覚ましてやろうと思ってな」
叩かれたまま退かないヤツの大きな手のひらに気付き頭を見上げる。
一応、睨み付けているのだがあまり効果はないようでそこから手が退く様子はない。
不意に、痛みを慰めるような優しい指先がゆっくり揺れた。
「さっさと保健室行くぞ、次は後夜祭の準備だ」
流れるような優しい暖かさ。
これはもしかして…頭撫でられてる!?
「…?どうした?」
初めて頭撫でてもらえた!
なんか…恥ずかしいって言うか、…ドキドキする!
嬉しいようなくすぐったいような、それでも未だかつてないほどの心臓の速さに、戸惑いを隠せない。
ていうか、このままでは。
死んじゃう!
「わわわわわかったちょっくら保健室にひとっ走り行ってくるから」
痛めた足のこともすっかり忘れてとりあえずこの状況から逃げ出す為の適当な嘘を口走った。
「あーリン待って!おれの作品見にいこうね!ランランのがね、すごいよ!」
ランラン…パンダか?
「よくわかんないけど分かった!」
ハルが投げた言葉にも適当に返して足を一歩踏み出すと、思い切り腕を引かれ体が宙を舞い、とっさに目を瞑る。
また尻から地面にぶつかる事を覚悟していたのだが、フワリと掠めたバニラの香りに受け止められた。
「全く。いくらアドレナリンが出ていたって痛めているもんは痛めてるでしょう。いい加減にしなさい」
まるで母親が子供を諌めるような口調だった。
見上げると、久遠寺くんの首筋から覗く鎖骨が目に入り息を呑む。
いやいや、変態か私。
「ご、ごめん」
雰囲気に流され、とりあえず謝罪。
「わかればいいんです」
「ほら、行くぞ」
結局、その場にいる全員で保健室に向かった。
みんな過保護だ。
でも、嬉しいのは内緒ってことで。