生徒会長様の、モテる法則
6-999 特別編 H組の教室にて
特別編
※三人称です
「こんなとこにおったんか、第ニホールいかへんの?」
「僕はいいよ、あの類の祭りは飽きた」
本校舎、二階H組教室。
文化祭はたった1日で終わってしまい気付けば後夜祭だった。
葵は会場に行く気もないようで自身の席に座ったまま窓から何が見えるわけでもない景色を眺めている。
「じゃあ俺もいかん」
右京は少しも考える素振りを見せず毒気のない笑みを浮かべた後、彼の前の席に跨り腰を掛ける。
背もたれを抱きかかえるようにして手を組むと、葵はチラッとその様子を確認して溜め息をついた。
「なんでよ、金持ちには珍しいんじゃない?ああいう屋台とか」
「まぁそうやけど、葵が行かんゆーから」
「僕は引っ越してくる前散々見たし」
「へー、引っ越して来る前っちゅうことは鈴夏とかと一緒にか?」
右京は、わざとらしく彼女の名前を強調して葵の顔色を伺うようにそちらを見ると、その視線に気付いた彼は顔をしかめて、窓に向けられていた視線を教室内へ戻した。
「僕を怒らせたいの」
「いややわぁ、慰めとんの。あんなんイジメといて、最後きちんと謝ろう思っとったんやろ?」
「盗み見聞きしてたの?本当に趣味悪い」
「スタッフ専用出入り口で話すんが悪い」
「それに謝ろうなんてこれっぽっちも思ってないよ。あれが僕なりの愛情表現だって、あのバカが全然気付かないから、教えてやろうと思っただけ。あいつは俺以上に、自分で自分を傷つけるから、そんなん許せないだろ」
「“鈴は俺が一生傷つけてやるから、お前は自分を傷つけるな”ってか?相変わらず歪んだ性格しよるなー!」
「うるさい」
「なんじゃ、誉めとんのに。そんな歪んどると、生徒会長に取られんで」
葵は右京の言葉を振り切るように立ち上がり、彼を無視して歩き始めた。
「どこ行くん」
「後夜祭。うっちゃんの事だから、後でホントの祭り連れてけって言うでしょ」
「よーわかっとるやん」
教室には、小さな笑い声が残り扉の閉まる音と共に漸く静けさを取り戻した。