生徒会長様の、モテる法則
7-1 電車
「どう買うんだこれ」
地元の最寄り駅前切符売り場。
自分が知らない事が屈辱的なのか、不機嫌そうに機械を見下ろして私に助けを求めている。
「420円にタッチしてお金入れるの」
「420円か…随分安いな」
眉間にシワを寄せたままポケットから財布を取り出して小銭を漁っている要冬真の姿を見て思わず吹き出しそうになった。
だって、品のよい彼のオーラは都会JRの大きな駅であろうと完全に浮いている。
「…なにしてんの」
「カードが入らねぇ」
「そこクレジットカード入れる所じゃないし、たかが420円をカードで払うな」
「万札しかねーんだよ、釣り出す方も大変だろ」
なにその気配り。
とにかく機械に気を使う必要はない事を教えて、その後も枚数を選択できる“人間マーク”のボタンを気にしている様子だったので「それはトイレ入る時に押すんだよ」と教えてやり駅のホームまで案内する。
「トイレも許可をもらわないと入れないのか、テロ対策万全だなJR」
ブハー!
ダメ!堪えるのよ鈴夏!
単純!バカ!ブハハ!
小刻みに震える肩をごまかすように、電光掲示板を確認するとちょうど前の電車が行ってしまった所のようで次まで5分はある。
要冬真は腕を組み額に滲む汗を拭きながら辺りをキョロキョロ見回していた。
本当に電車へ乗るのが初めてらしい。
「次の電車まで5分あるから、飲み物でも買う?」
「5分も待つのか、やっぱり車の方が楽じゃねーか。暑いし」
「バカ!みんな驚いちゃうでしょうが!」
あの黒塗りベンツで行こうものなら村のみんなが失神するわ!!
――…時は去る事15分前
何故か私の家にやってきた要冬真は扉を開けた瞬間言い放った。
『お前の実家に連れていけ』
夏だというのに涼しい顔をして、有り得ない言葉を言い放ったヤツは暑さを煙たがるように私を見下ろしている。
夏休みは会えないと思っていたので驚きのあまり、不覚にも一瞬時が止まった。
『は…、え!?は?なんで?』