生徒会長様の、モテる法則
やっとの事で我に返ったものの状況についていけず、思わず聞き返した私を上から下まで見下ろした要冬真はチラリと視線を外に移した。
『あいつがお前の事知ってて俺が知らないなんて、気に食わねーだろ』
――…あいつ…葵か?
Tシャツから覗く首筋がイヤに色っぽい。
更にジーパンというラフなスタイルにも関わらず、駅のホームで若い女子達の注目の的になっていた。
――…ムカつく
何故ムカつくかは解らないが、ムカつく。
なんだ私、あの日か?
私はお茶を2本購入し、フラッグの如く目立っている要冬真の元へ戻った。
ペットボトルを一本ヤツに渡すと、何を思ったかポケットから財布を取り出して先程切符売り場でくずしたばかりの千円札を手に取る。
「は、なにこれ」
「茶の代金」
「こんな高くないし」
“まもなく、5番線に総譜線味潟行きの列車が参ります。黄色い線まで下がってお待ちください”
放送に促され、プラットフォームに電車が入ってきた。
押された風があちこちに分散して、少しだけ汗ばんだ体を冷やしていく。
私と要冬真の間を行ったり来たりしていた千円札が揺れていたが、ゆっくりと速度を落としてピタリと静止した。
乗客は少ないようだ。
扉の開く音に気を取られていると、要冬真はお札を手放し跨ぐように車内へ乗り込んでいったため慌ててそれを落とすまいと握りしめ、後に続く。
覚えてろ、絶対千円相当のモノをプレゼントしてやるからな!
乗り込んだ瞬間感じた体を押し返すような冷気に、小さく鳥肌が立ち無意識に腕を擦った。
「そんな露出してるからさみーんだよ」
呆れたような声で私を振り返った要冬真を見上げ反論しようとしたが、続きは座ってからだと口元を無理やり閉じ、空いていた席に誘導し、二人で腰を掛ける。
「だって、暑かったじゃん」
「結果寒がってたら意味ないだろ」
まぁ、ごもっとも。
「で、どこまで乗るんだ?」
「とりあえず終点まで、で私鉄に乗り換え」