生徒会長様の、モテる法則
7-5 墓参り
「また帰ってこいよ!」
「姐さんだけね!お前はくんなよ!」
ラーメン屋から出た私達は昨日歩いた商店街を歩いていた。
まだ午前中という事を手伝ってか、暑いと言ってもかなり過ごしやすい。
要冬真と過ごした一泊は、思っていた以上に楽しくて、終わって振り返れば本当に一日中一緒に居たのかも疑わしく思うほど短かった。
――…もうちょっと一緒に…
いやいやいや!
帰るから!
「おい」
「ギャッ」
やや後方から肩を叩かれ、背中がスッと冷える。
立ち止まり振り返ると、私の数倍涼しげな顔をした要冬真がこちらを見下ろしていた。
お前は私より太陽に近いだろ!
なんでそんな表情が初夏風なんだよ。
時期は真夏ですよ!
絵の具でベッタリ塗りたくったような空の色に、綿菓子を引っ張ったような白い雲、そんな景色に彼は綺麗にはまり込んでいる。
呼び止めたきり無言の彼を不審に思い、両手をヒラヒラと目の上で振ってみると、空いた手でその指先を捕まえてゆっくり口を開いた。
「まだ、行ってない所あんだろ」
「…、へ?」
柔らかい声で、それでも少し困ったような表情に戸惑い、言葉を返せないでいると私達の間を細い、風が流れた。
それが妙に生暖かくて、ジワリと汗が滲む。
「お前の、母親の所だよ」
一瞬、頭の中の大きな何かが音を立てて動いた気がした。
母親、つまり、死んだ母の墓、ということだろう。
確かに家に居て母さんがいなかったのを不自然に思うのは当然だ。
「全部、教えろ」
胸を刺すような、重い言葉。
何か言わなければ、そう思ってもあまりに要冬真の私を見る目が真っ直ぐで、逃がすまいとするものだから“嫌だ”と言うことも出来ない。
午前中の商店街、俄かに賑わう小さな通りで私と彼だけ、時間が止まっているのではないかという錯覚に陥る。
「お前の事、全部知りたい」
NOとは言わせぬ要冬真の心地良いアルトの声と、ふいに香った揃いのシャンプーの匂いに、私はゆっくりと頷いてしまったのだ。