生徒会長様の、モテる法則



私が母さんだったら、娘を恨んだりしない、私が親父だったら娘を恨んだりしない。




それなのに、どうして。



あんな、酷い事ばかり考えていたんだろう。





真っ暗な視界に、映える大きな手が覗いた。
要冬真の手だ。



「お前も強くなれ」



「でも」





「怖いなら、一緒に飛び越えてやる」


言葉と共に射した光は、体を突き抜けじんわりと全体に染み込んでいった。




顔を上げると、いつもの偉そうな笑顔を浮かべた要冬真の目元が見える。




「俺様を全力で愛してみろ、そうしたら、その愛だけでお前を死ぬまで愛してやる。一生かけて証明してやるよ。愛の強さってやつを。揺るがない強さを」




漆黒の髪が揺れ、長い睫毛が一度大きな瞬きをした。
口角が上がり、ニヤリとバカにしたような笑みを浮かべて駄目押しと言わんばかりに、はっきりとした口調で言い放つ。



「安心しろ。俺はお前如きに傷付けられたりしないし、お前より先に死ぬなんてあり得ない」



自信過剰な言葉、それは彼本来の素のままの姿でいつもなら腹が立つのに、むしろ嬉しく感じるのは、私が絆されてしまったからだろうか。



「俺はお前と違って強いからな」


俺を愛せ、だなんて馬鹿馬鹿しいしふざけてる。
でも彼の根拠のない自信に救われたのも確かだった。



誰かを愛して強くなる。



私も母さんみたいに。



誰かの為に最期まで二本の足で立ち続けられたら。



「で、どうするんだ?」



私が顔を上げると、いつもの彼がこちらを見下ろしていた。




「手を取るか取らないのか。強くなりたいだろ?」



依然差し出されたままの手。





「俺を、信じろ」



――…そして


「母親の分も生きて、愛して、愛されろ」





――…鈴夏、お前は俺と母さんの子供だ。その事を、忘れないでくれ




全てを知ったあの日回された、腕の暖かさの意味が漸くわかったきがする。

握り締めた手が、泣きたくなるくらい暖かかった。




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