生徒会長様の、モテる法則
7-999 番外編 その後の二人
墓石が並ぶ砂利道を歩きながら、私は遠くに見える大木に目を細めた。
――…宿題か…
遠い目をしているのは、宿題から現実逃避をしているからじゃない。
ただその方が絵になるかなと思っただけで。
決して宿題やるの明後日からにしようかなとか思ってないよ!
誰にフォローするでもなく、そんな事を悶々と考えていると自分の左手の自由が奪われていることに気が付いた。
なんで手が動かな、
「イー!!!」
なんで!!
「なんだお前いきなり、キモチワリィ」
いや、あんたも連帯責任でキモチワリィから!
なにさっきの流れで手繋いだまま歩いてるわけ?
私の左手には、大きめの綺麗な指先が絡まっておりそこから引き締まった二の腕シャツの裾、不思議そうに首を傾げる要冬真のあどけない感じ!
――…何故だ!
勢い良く手を振り上げると、触れていた唯一の部分が呆気なく離れて私の指が名残惜しそうに空の青を引っ掻く。
っておい!なに名残惜しそうにしてんだ指先!この雌豚が!!
――…俺様を全力で愛してみろ、そうしたら、その愛だけでお前を死ぬまで愛してやる
愛し愛されるって何!?こういうの何て言うの?
…、犬猿の仲?
私サルでこいつは犬?
あながち間違ってない所が怖い!
「おい、前」
要冬真と声で我に返り、よろめいた体に真っ直ぐな棒を入れた。
「こんにちわ!」
向かいから歩いてきたのはスーツ姿の男性だった。
白髪混じりの髪の毛は額から後ろに流れており、俗に言うオールバック。
品の良さそうな目尻のシワ、口元のホクロ、顔のどこかにホクロのある奴は性格が悪いイメージ(該当者・葵のみ)があるが、彼は優しそうなおじいさんって感じだ。
「こんにちは」
私達に軽く会釈をして通り過ぎる瞬間、柔らかい花の香りが花を掠める。
彼の残り香を振り返ったのは、意外にも私ではなく要冬真だった。
「どうしたの?」
「…いや、なんでもない」
要冬真はしばらく彼を見ていたが、何事もなかったようにまた歩き出した。