生徒会長様の、モテる法則
女性のように長い髪が高い所で一本で一つにまとまっており、背中でゆらゆら揺れていた。
「なんか、綺麗な人だね」
「いやー!俺んの方がええで、上手いし」
「何が?」
「ナニが」
ニタリといやらしい笑みを浮かべた右京に咽せ返るような殺意を覚えた私は拳を握り締めた。
大きく振りかぶって右ストレート。
彼がそれに気付いて喉を鳴らした瞬間、囀るような美しい声に名前を呼ばれ拳が鳩尾を捕らえる直前でピタリと体が静止する。
“鈴夏様”
と、そう呼ばれたのだ。
誰に?
右京も不思議に思ったのだろう、私達はほぼ同時にその声の主を見上げた。
大きな影、それは薄茶の宝石のような目。
前髪はやや長く顔にかかるのを避けるように耳の方へ流れている。
――…さっきの人だ…!
先程前庭で注目の的だった謎の生命体・ブラック。
いつの間に昇降口前まで歩いてきた!
はえーよ!
お世辞にも秋とは言えない暑さなのに汗一つかいていない涼しげな額は何とも羨ましい。
しかも、人を“様”と呼んでおいてこの無表情は一体…。
怖い!
無言の圧力に潰されそう!
「初めまして、今日から鈴夏様の執事を務めさせていただきます。深月【ミツキ】という者でございます」
インプットされたプログラムのように淡々と、そしてはっきりと言葉を発する口元をマジマジと見ながら、私は思わず呟いた。
「え…、懸賞に当たったのかなもしかして」
第八章
現れた鉄仮面執事