生徒会長様の、モテる法則
8-2 誘拐
私はあれ以来帰ってこないブラックの事なんか気にもせず、自分の事について永遠と考えていた。
確かに、“愛してみろ”とは言われたがそれは彼が私へ差し伸べた精一杯の優しさであってだね、あんなクサイ台詞だろうと私は少しだけ前向きになれたわけだが。
どういうこと?暗示でもかけられたのかな私!
いやいや!
好き、ではない!嫌いではないが、愛とかそんなんでは…!
――…“好き”ってなにかわかるか?
少し前、右京にそう聞かれた事を思い出した。
彼に対しては色んな感情があるのは確かだ。
話しかけられると嬉しいとか恥ずかしいとか、触れられると照れくさくなるだとか、もっと知りたいとか、彼の表情に振り回されている事とか。
『一生かけて、証明してやる』
今でも思い出すと顔が火照る。
ずっと、一緒に居てくれるのだろうか。
私が望めば。
彼の言葉の真意は解らないが、嬉しかったのは確かで途端に何かの枷が外れたのも確か。
ーー…あいつの言葉を信じたい
傷付くかもしれない、それでも。
「鈴夏様」
「うおおぉ!」
校門を抜けた所で、完全に死界になっていた柱の影から突然名前を呼ばれ体が飛び上がった。
左胸を押さえながら、声が聞こえた方へ視線を投げると誰かが立っている。
暗がりで顔は確認し辛いが、口調と雰囲気ですぐに誰だか分かった。
「なんだブラックか…」
「お待ちしておりました。さぁ参りましょう」
どこに参る?
意味が分からず唖然としていると、ブラックはサッと右手を上げ道の奥の方へ合図を送った。
すると遥か遠くで止まっていた黒い車がエンジンを吹かし、ゆっくりと走り出して私達の目の前に止まる。
「さぁ、どうぞ」
後部座席のドアをなんともスマートに開けたブラックは、私を誘導するかのように手の先を車内に傾けた。
「え?なに?どういう事?送ってくれんの?」
「当然です」
なに!?
どういうこと?足長おじさんから私へのプレゼント?