生徒会長様の、モテる法則


お嬢様らしくってなに?
ワンランク上のラーメン屋になるには必要なのだろうか。

話の流れも意図も読めずに黙っていると、私が理解していない事に気がついたのかブラックは胸の内ポケットから手帳を取り出した。


「つまり、鈴夏様。あなたには女性らしくなっていただかないといけないのです」



「女性らしく?」



さっきハルに“女の子らしくなった”って言われたばっかりなのに…!

まだまだ女子力が足りないと、そういうわけですか?
やっと人間の底辺ですか、そうですか。




「鈴夏様を一流の女性に育て上げて、本邸に入れるのが私の務めでございます」



まるで映画のようだと思った。
突然現れた、鉄仮面のように表情が堅い執事、謎の高級車。
庶民の私。


取り出した手帳に何やら書き込んでいた彼は車が止まるとすぐにそこから降りて反対側に回り、私の真横にあった扉に手をかけた。


それぐらい自分で開けるのに、執事ってやつはだいぶ神経質らしい。


ドアから入る向かい風に押されながら足をコンクリートへ降ろして立ち上がると、目がくらみ思わず瞼を閉じた。

太陽光に、ではない。


目の前に広がる景色の眩しさに、だ。


大きな門、大きな木製の墨で書かれた表札、塀から覗くのは様々な大木。


その家は異常に大きく、どこぞの金持ちが住んでいそうな――…それこそ要冬真の家のサイズに負けず劣らず。

しかし彼の家とこの家の違いは、洋風か和風かという事。

門の奥に見える瓦屋根は、まさに純日本風だ。



「え、なにここ。ブラックの家?」



だとしたら不釣り合いだろ!
スーツでこんな家彷徨いてたら詐欺だよ詐欺。




「升条家別邸でございます」




『升条ビジネス』




ふと、コトリさんの言葉が頭を過ぎった。



「金持ちの?」



コトリさんのお兄さんが居るっていう一流企業と同じ名字。
ブラックは呆れたように『そうです』と言ってからこう付け加えた。



「鈴夏様にはこれから、修業していただきます」



「…、はい?」


カメハメ波でも修得しろってか?

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