生徒会長様の、モテる法則
「こいつは今から仕事がある。迎えならいらねぇ俺が送っていくからな」
「え!別に一人で帰るし!」
「お前は黙ってろ」
なんで!
私の話してんのに私の意見が尊重されないのは何故?
これが金持ちクオリティーってやつなの?
「要様、そのお言葉はありがたいのですが、私は鈴夏様の執事であります故、これは仕事であり使命なのです。そちらの方、ご理解いただきたく存じ上げます」
「あれ、ブラック、こいつの事知ってんの?」
「俺様をなめんなよ、要財閥の一人息子だ。升条の執事が知らない訳ないだろう」
あーそうですか!
私はお前なんか知らなかったけどな!
「それもありますが、うちの弟がお世話になっておりますので」
「弟?」
「琴理陽介が、要家の執事として仕えているはずです」
琴理?
ことりようすけ…。
「通称・太陽の子の兄!!」
「お前ネーミングセンス皆無だな」
あんなニコニコ笑う人のお兄さんって、こんなに笑わないの!?
どうして?弟に表情筋取られちゃったの?
紺をベースに作られた、単調だが上品な色彩の浴衣の裾が揺れ、ブラックが頭を下げたのが分かった。
彼の、一本に結われた青に近い黒の髪がサラリと肩から零れ落ちる。
「申し遅れました。私琴理深月、升条様の本邸で執事を務めております。」
「もしかしてとは思っていたがやっぱりそうか」
えー、そう思ってたなら一言声かけてよ。
驚いたの私だけじゃん。
ゆっくりと顔をあげたブラックをマジマジと見つめると確かに釣り目気味な目尻はどことなくコトリさんを彷彿とさせるし、声に関しては少し彼の方が低いが鼓膜を震わせる振動レベルでかなり似ている。
「鈴夏様」
「は、はい!」
「仕事が終わるまで待っております、戻ってください」
「いや!待って!私実家に帰りたいんだけど!」
「それは許可出来ません」
ピシャリと、無表情のままはっきりと否定されたものだから驚いて背筋を伸ばすと、心持ち優しい口調でこう付け加えた。
「会わない約束ですから」