生徒会長様の、モテる法則
8-4 人間らしさ
「鈴夏様」
「…」
「そんな私を睨み付けていないでお食べください」
「会わない約束ってなに」
「そのままの意味です」
「なんでよ、全く事情が飲み込めないんだけど。これじゃあ界王拳取得しても放つ相手が居ないようなもんじゃん、ベジータ不在じゃん」
「私はドラゴンボール世代ですがアニメなどは一切見なかったので理解しかねます」
「え!ドラゴンボール見てないの!?勿体無い」
結局実家には帰れず、生徒会の仕事が終わり校門を出ると律儀にブラックが車と共に待っていた。
要冬真は不機嫌そうだったが、執事持ちの為か「せっかく待っててくれたんだから乗ってけ」と、ブラックやシルバー(運転手のご老人)を気遣う発言をして私の背中を押した。
――…ちょっと一緒に帰りたかったのは秘密だ
「ニュースばかり見ていたもので」
ブラックは、長い指先で丁寧に持った箸を起用に使い焼き魚をほぐしていく。
マナーの模範のような人間だ。
足の先から指先まで、全身に針金が入ったように緊張しているのに、驚くほどしなやかに事をこなす。
ドラゴンボール世代のくせにドラゴンボール見てないとか、じゃあスラムダンクに憧れたり霊丸を出す練習とか、逆刃刀が欲しかったりとか、そういう恥ずかしいエピソードはなかったのだろうか。
「ニュースばっかり?」
「はい。生まれた時から執事になる教育を受けてましたから」
「コト…、陽介さんも?」
「陽介は、10になるまでそう言った指導は受けていません」
音も変えずにブラックは付け加えると、白米を口に運んだ。
「なんで?」
素直に疑問に思ったから口にした、ただそれだけだったのだがピタリと動きが止まった無表情の彼がゆっくりと顔を上げる。
「母が」
「うん」
「母が私を見て、“弟は執事にはしない”と言ったからです」
怒っているのか、泣いているのか、それとも昔の事だから何とも思ってないのか、それさえも分からなかった。
だって、口元一つ動かないから。