生徒会長様の、モテる法則
8-5 不器用
「親父ィィィィ!説明しろ!」
私は勢いよく、暖簾がかかって間もないだろう店の扉を壊すように引いた。
――…僅か半月振りの帰省である
翌日。
学校は休みだと言うのに、何故か朝九時にたたき起こされよく分からないまま朝食を取り気付けば車に乗り込んでいた。
戸惑うまま、いつもの感じでブラックとシルバーをメンバーに加えて車は走り出す。
どこに行くのかと思えば、着いたのは金白村だった。
「あれぇ、鈴!なんで来た?」
「なんでじゃねーわクソ親父が!意味がわからん突然鉄仮面戦隊執事ンジャー・ブラックとシルバーが現れて拉致られたんだよ!」
「あぁ。もうそんな時期か、鈴、立派なお嬢さんになるんだぞ」
「意味がわからん説明しろ!」
開店直後の客が一人もいない店内。
朝支度を終えて、キッチンの椅子に座っていた親父に掴みかかると、仕方ないという表情を見せ、ゆっくり立ち上がり、入り口に掛かっていた暖簾を店内に仕舞い込んだ。
「分かった分かった、説明すっから座れ」
扉に“臨時休暇・12時から開店”と書かれた紙を貼り付けて、一番近くにあったテーブル席に私とブラックを座らせる。
小さなコップに水と氷を入れ持ってきてから親父は、向かいの椅子に腰を下ろした。
「しっかし、よく会う事許してくれたなぁ兄ちゃん」
「鈴夏様が事情を知らない状態では話が進まないと感じました故、旦那様に納得していただきました」
困ったように笑う親父と、依然無表情のブラック。
「そっかぁ、すまねぇなぁ。大変だったろ」
「いえ」
やっぱり親父とブラックは知り合いとまではいかなくても何か関係があるらしい。
痺れを切らした私は、とりあえず水を一口飲み親父を睨みつけた。
「で、私が突然お嬢様にならなきゃいけない理由はなんなの」
親父は少しだけ表情を曇らせた。
本当に少しだ。
しっかり見てなければ、気付かないくらいの。
「遡ると、俺と鈴実の結婚から話す事になる」
ブラックの前に置かれたコップの中の氷が、音を立てた。