生徒会長様の、モテる法則
「鈴実は、元々一流企業の家の一人娘だった。升条鈴実、アイツの旧姓だ。兄2人の後の初めての女の子だったらしい、本当は俺なんかと出会うはずもない雲の上の存在」
――…でも
「俺達は出会った。鈴実は元々体も弱かったから、家を出る事自体間違っていたがあいつは家を捨て縁を切り、俺の所に来てくれた」
親父は、母さんの話をするときはいつも苦しそうな嬉しそうな表情を見せる。
私がなにも言い出さないのを確認して、また話し出した。
「まぁ、縁も切られて、この小さな村に越してきて、ラーメン屋を始めた。そこからはお前も知っての通りだ」
「ちょっと待って、昔の事はよく分かった。で今更私が升条の家に行かなきゃいけない理由にはならんだろ、縁切られてんのに」
「実は升条の企業拡大の為に、縁談が持ち込まれたのです」
「は!?縁談?」
ブラックが突然口を開き、しかもとんでもない事を言ったのでその端を捕まえ投げ返すように声を荒げる。
「今、升条の代表取り締まり役は鈴夏様のお祖父様にあたる人物、時期社長は鈴実様のご兄弟の長男です。長男二男、共に結婚しておりますが全て俗に言う政略結婚。今回持ち込まれた縁談も勿論その類ですが、相手の方が男性でした。生憎社長の孫は全員男。そこで白羽の矢が立ったのが鈴夏様、あなたです」
淡々と話すブラックの無表情が憎たらしい。
つまり私は、花嫁修行をさせられると言うわけだ。
「意味わかんない、じゃあ三年になって突然転校したのも?」
「升条からのご達しでな、授業料全額負担するから通わせろって」
「ざけんな!」
当然のように言い放った親父の口調に、頭に血が上った私は椅子を倒すように立ち上がり、テーブルを勢いよく叩いた。
「母さんは金持ちのお嬢様だったかもしれないけど、私は、“仁東”で“升条”じゃない!勝手に全部決めやがってクソ親父!」
「お前に相談したら、絶対嫌がるだろ」
「そりゃそうだけど!私は――…」
私は、親父と母さんの子供だ。
金持ちの家の一人娘じゃない、ラーメン屋の娘だ。