生徒会長様の、モテる法則
本当は、親父も、私を疎ましく思っていたんだろうか。
『どうして親父さんがお前を産むことを承諾したか、考えればすぐ分かるだろ?』
墓地で話した、要冬真の言葉が体を突き刺した。
信じたい、信じたいけど、でも…。
「親父は私が、…嫌いなのかよ!」
親父の顔を見て、言うことは出来なかった。
視界に広がる、お世辞にも綺麗とは言えないテーブルがほんの少し滲む。
静まり返った店内に、ポツリと親父の低い声が響いた。
「…、あぁ…そうだよ」
顔を上げると、私を見ようともしない親父の苦しそうな表情が目に入った。
その瞬間、体中からドロリと汚い何かが溢れ出す。
「だから、お前は升条の家にいけ」
「鈴夏様!」
親父の声は、まるで、合図のようだった。
氷のように冷たくそれでいて、震えた声で、優しく体を突き刺した。
店を飛び出し走り出した私を、追いかけて一瞬で捕まえたのは親父ではない、黙って話を聞いていただけの赤の他人。
「ちょっと…、離してよ一人にして!」
「出来ません」
「なんでよ!」
「あなたが、泣いてらっしゃるからです」
「泣いてない!」
飛び出した商店街、まだ人は疎らだが妙な二人が言い合いをしているからか、好奇な視線を感じる。
でもそんな事は関係ないくらい、私は取り乱していた。
意外に彼の力は強く、掴まれた手が離れる様子はない。
曲がりなりにも、年上で男だ。
「あなた達は本当に素直でないですね、親子揃って」
言葉と共に吐かれた溜め息に顔をあげると、眉尻をほんの少し下げたブラックがこちらを見下ろしている。
優しげな目元に、少しだけ荒い喉元が落ち着くのを感じた。
「鈴夏様、よく聞きなさい」
私の両肩に手を置いて、体を正面に向き直すと頭を落として高い身長を合わせるように視線の高さを揃える。
子供をあやすように。
「夏樹様は、反論しました」
『鈴夏はモノじゃない、それに俺の娘だ、悪いが金を積まれようと渡しませんよ』
「父親らしく、堂々と」