生徒会長様の、モテる法則
9-1 応接室
東京23区内に建つ“升条ビジネス”本社にやってきた私は、高層何十階建てのビルに目を見張った。
首が痛くなりそうな高さ、太陽を反射する窓、“升条”の名がどれだけ立派か見ただけで容易に理解できる。
深月さんと一緒に、自動ドアをくぐりインフォメーションに立ち寄り、20階にある応接室に通された。
揃えられた家具は全て高級そうなモノばかり。
足の短いテーブルはツルツルで、覗けば自分が映り込みそうだし、ショーウインドーには様々なトロフィが飾ってある。
大きな窓からは東京の街が望めるようになっており、今日は天気の良さも手伝って景色は最高だ。
私は、決戦前夜の戦士のような気持ちでそれを眺めていた。
柔らかいソファに沈むように座り、目を閉じシミュレーション。
とりあえず深月さんの教えは守って、相手の意見を聞き、それから私の気持ちを話す。
柔らかすぎるソファに沈みながら精神統一していると、ノブを回す音が室内に響いた。
それに反応して、背筋がピンと伸び、目が自動的に見開く。
後ろに立っていた、深月さんの雰囲気も変わった気がした。
「こんにちわ、遅れて申し訳ない」
私が立ち上がると同時にゆっくりと開いた扉から顔を出したのは、優しそうなおじいさんだった。
「こんにちわ」
小さく頭を下げる。
どこかで見たことのある顔。
白髪混じりのオールバックに上品そうな目尻のシワ、口元のホクロが印象に残っているから間違いない。
顔のどこかにホクロがある人は、性格に難あり!
私の中で全く根拠のない法則が浮かび上がった。
「升条義人、君のおじいさん。かな」
目元だけで笑った義人さんは、ソファに座る前に右手を差し出す。
とりあえず、決戦前の握手と行きましょうか!
なるべく感情を表に出さないように握手を交わし、腰を下ろす許可を貰いソファに再び体を沈めた。
「会うのは、二回目だね」
やっぱり。
「墓地でお会いしました。あの時はお祖父様だとは知らず、申し訳ありませんでした」