生徒会長様の、モテる法則
「いやいや!いいんだよ!本当、鈴実に似てきたねぇ、美人さんだ」
「そんな、勿体無いお言葉です」
楽しそうに笑う義人さんの表情は、毒気の微塵も感じられない普通のおじいさん、という感じ。
親父の祖父母は早くに他界している為、自分の血縁者に会うのが久しぶりだ。
本当に、この人が親父に脅しをかけたのだろうか、疑いたくなる。
「さて。今日わざわざここに来てもらったのはね」
いきなり本題か!
私は気付かれないように、汗ばんだ手を握りしめる。
口を開いた義人さんを、なるべく無表情で見つめた。
「今日から、君には升条家に入ってもらい同時に縁談を進めてもらおうと思ってね」
「お祖父様」
「なんだい?」
「そのお話なんですが…」
「君に拒否権はない」
上からナイフを振り下ろすように放たれた言葉に、私は息を呑み完全に思考が一瞬停止した。
先程まで、あどけない笑みを浮かべていた人とは思えない鋭い声色と視線に、意気込んでいた言葉がすっかりぶっ飛んでしまっている。
何も思い浮かばない。
「正確に言えば、君には絶対拒否することは出来ない」
目元にシワが寄り、警戒心をくぐるような笑顔を向けた。
「だって君は、お父さんが大事だろう?」
否定は出来ない。
「なんで、そこまでして私なんですか」
やっと出た言葉がこれだ。
しかし何千人もの社員の上に立つ男の威圧感と威厳に、私は完全に怯んでいた。
「チャンスだからだよ」
「チャンス?」
「今回の縁談は、成功すれば升条にとって大きな利益になる。先方の会社と共同して、新しい事業を展開しようと思ってね、約束手形。みたいなものだよ」
――…このクソオヤジ
腹の中で声に出さずに呟いた。
その為に、私は誰とも知らぬ馬の骨と結婚させられると言うのか。
「先方も君を気に入ってくれるはずだよ。彼も凄く紳士的だし、悪い話じゃあないだろ?」
いくら気に入られても、紳士的で優しいからと言っても、納得出来るはずがない。