生徒会長様の、モテる法則
相手が好きな人でなければ、私にとって。
――…試練
昔の自分の言葉を思い返す。
「実は今日、顔合わせしてもらおうと思ってね。呼んであるんだよ、鈴夏ちゃんも会ったら気に入ると思うよ、凄くカッコイいから」
義人さんは、楽しそうに喉を鳴らした。
孫が出来たおじいさんのように浮き足立ったような表情だったが、背景に新しい事業の成功が見え隠れしていると思うと腹が立つ。
「外に待たせてあってね、おーい。入っておいで」
私の意見も聞こうとせず、義人さんは扉の外へ大声を張り上げた。
上手く流されてる。
しかも脅しにも似た先程の言葉。
『お父さんが大事なんだろう?』
やっぱりホクロはダメだ!
性格悪い!
どうすればいいんだろう。
一番理想的なのは、私が結婚せず升条家にも入らず新しい事業が成功する、だがこれは難易度が高い。
――…そうだ!
破談か!
私が先方に気に入られず、結婚したくない!なんて事になれば私を升条に入れようなんて思わないし、いっそのこと縁を切ってしまいたい、そう思うかもしれない。
はたまた、相手も政略結婚は嫌だ俺には好きな人がいるんだ!的だったら?私が升条に残るのは免れないが結託すれば、結婚せずとも事業展開が可能!
「大丈夫、升条家として結婚さえしてくれれば、夏樹君と会うのは制限したりしないよ。元々会わない約束は、結婚するまでだからね」
だめ押しと言わんばかりの口説き文句。
そういうことじゃねーよ!と暴言を吐こうとしたら後ろに立っていた深月さんに睨まれた。
すいません!
そうこう考えているうちに、ドアが開き、私は若干ソワソワしながら立ち上がると、室内に入ってきたスーツ姿の若い男が目の前に立った。
「こんにちは、お嬢さん」
あまりにも聞き覚えのある声に、私は開いた口が塞がらなくなる。
要冬真より少しだけ低いが充分高い身長に、長い手足、少し赤みがかった髪に縁のないメガネ、不意に香ったバニラは既に脳が覚えていた。
「久遠寺、秋斗くんだ」