生徒会長様の、モテる法則
右京は冷たいコンクリートの上に、ゆっくり背中をついた。
両手を太陽にかざしながら横目でこちらを見る。
その、大人びた視線に心臓が飛び跳ねた。
「でも、嬉しいと、幸せは、違う」
頭の後ろで手を組んで、涼しげに目を閉じた彼はゆっくり口を開いた。
「一緒に居て自分が幸せを感じるんは、誰や」
「え、なにその自分本位な感じ」
「初めはそれだけでええ。前にも言ったやろ?最初は単純や。あの人が笑ってくれたら幸せ、そんだけ。自分鈍いけ、そこからでええねん」
自分の、幸せ。
今まで考えた事も無かった。
だって自分が幸せを感じる瞬間なんてーー…
「うぁああ!」
「なんや、びびったわ!」
やっぱり!?
やっぱり要冬真なの!?
気にかけてくれる感じとか、笑いかけてくれる表情とか、頭撫でられる瞬間とか、真っ直ぐな瞳とか。
「走馬灯のようにぃぃぃ!」
「走馬灯?なんやそれ、自分死ぬで」
「マジか」
「やって死ぬ寸前って、思い出が走馬灯の様に脳内を駆けるらしいから」
「私死ぬ!?愛に食い殺されて死ぬ!」
「おお、かっこええな、それ」
「どこがだ!まだ殉職の方がカッコいいわ!」
勢い任せに怒鳴りちらしてから、我に返り押し黙る。
薄々は勘付いてたけど、やっぱりそうなの?
悔しい!
嫌いだったヤツを好きになるって、もの凄く悔しい!
でも、“好き”を否定出来ないのが憎い!
「なんや、吹っ切れんの早いなぁ」
「なにそれ、私を楽天家みたいに言わないで。案外哀戦士なんだけど」
「いやいや、成長したなぁって思てな」
どこかの父親のようなジジ臭い発言だ。
「きっと昔の自分に同じ事言ったって、聞く耳もたんかったと思うで、偉いなぁ、立派になりおって」
横から伸びた手は、私の首に回って一気に引き寄せられた。
彼の体の上に倒れて飛び込んできた景色は、青い空とワイシャツの線。
その心地よさに気付かれないように笑う。
――…俺を信じろ
あの時のあの言葉が、きっと私を変えたのだ。