生徒会長様の、モテる法則
2-1 一時間
私は机の上の書類と戦っていた。
なんでも5月末に行われる“技術学芸会”とやらの催しモノに関するアンケートの集計なのだが、中々これが面倒くさい。
というのもクラス替えをした最初の行事がその“技術学芸会”というやつらしく、クラスが一致団結して高度な発表をするというものなのだが、クラスで決めた分野と持ち時間、などを見ながらプログラムを組み立てたりモノの貸し出しをするなどとにかく技術学芸会全ての骨組みを作り上げなければいけないのだ。
「はー、どんな会なのかも想像つかないのにプログラム組めって言われても無理じゃね。大体なにこれ、うちのクラス“演劇”なんだけど。確実に奴の独壇場なんだけど」
私は向かいで黙々と作業を進める、書記仲間のユキ君に話を振った。
「先輩やる気がないだけじゃないですか。悪い頭をせめて使ってください」
樫雪慧【カシユキ-サトル】、二年生生徒会役員・書記。
先程から、私が話を振っても振っても槍のような返答が返ってくる。
つまり、私を先輩だと思っていないということだ。
辛うじて敬語なのが救いだが、彼の視線はいつも冷ややかで冷静さを保っているようにもみえた。
「ユキ君さ、私と協力しようっていう気はないの?」
「鈴夏先輩」
「ん?」
ユキ君は突然作業を中断し、向かいに座りっぱなしの私の手元をジッと見つめた。
なんとなく固まって、彼の手元にある書類へ視線を移す。
綺麗に並べられた等倍の文字。
「協力って意味…知ってます?」
「そりゃあ、力を合わせて…」
「足してマイナスだったということは良くありますから。俺は効率良く作業を進めてるつもりです」
「おいこら、私だってやるときゃやるよマジで」
「なら口は動かさず手を動かしてください」
冷たい。