生徒会長様の、モテる法則
9-4 強引な選択
「鈴夏さん」
「はいなんでしょう秋斗さん」
「二人きりなんですからいいでしょう、いつも通りでも」
そう言う問題ではない。
和室・正座・料亭・スーツの彼・着物の私。
頼りの深月さんも席を外していない。
テーブルに置かれた茶、茶柱を探すフリをして湯のみを覗き込むが見つからなかった。
升条家と久遠寺家、つまり私と久遠寺くんの為に設けられた、お見合いと言う名のただの顔合わせは、どこぞのドラマのように『さぁさ、後は若い二人に任せて私たちは退散しましょう』と、気付けば二人きり。
「正座だって、本当は足が痺れてるんじゃないんですか?」
「ぐ…」
何故バレた!
毒づきながらも足を崩してテーブルの中にそれを伸ばすと、久遠寺くんはそれこそ、シビレを切らしたように笑い出した。
「借りてきた猫とは、まさに先ほどの貴方ですね」
くつくつと、口元に拳を置いて笑う姿は楽しそうなのに上品で、あれが彼の素なのだと思うとちょっと悔しくなる。
私だって、少しは上品になったつもりだったのに、それは所詮付け焼き刃。
深月さんと二人きりになれば忽ち乱暴な言葉遣いになるし、学校では言わずもがな。
今だって、ちょっと指摘されただけで気持ちが折れてお嬢様らしくするのを諦めた。
だって、久遠寺くんだったし。
「でも、中々頑張ってますね。義人様の前では」
「ホントだよ、何度遠回しに結婚を断ってみても聞く耳持たないから、拳で解決出来るならどんなに楽だろうかと…」
目を細めて開いた障子の奥に見える、真っ赤な葉が風に揺られて秒針の速度で落ちていった。
たった一瞬だった秋は、もう終わりに向かっている。
「いいんじゃないですか?私はそんな貴方が好きですけど」
「…!!」
超直球ドストレート!!!
「照れると可愛いですね、もっと言っていいですか?」
「いやぁぁぁ!やめて!恥ずかしい!」
駄目!
そういうのに免疫ないんだから!
私の生体防御反応、その辺には反応しないんだからやめて!
赤くなる顔を隠す様に、私はテーブルに右頬をつけた。