生徒会長様の、モテる法則
理不尽な怒りはどうやったって収まらない。
「ふざけんな」
目も合わせず地面を見たまま、怒りを抑える様に言葉を絞り出す。
開いてしまった扉に足を踏み入れて今更後悔した所で。
後戻りは出来ない。
珍しく喧嘩を始めた私たちを、クラス中が遠巻きに見ている。
最近は、喧嘩も下らない内容のモノが多かったし、何となく殺伐とした雰囲気もなかったから、驚いてるんだろう。
全体の空気が、重かった。
――…だって、好きなんだもん
私の事気にかけて、助けて、優しく頭を撫でて。
他の女の子なんか見ないで。
――…好きって言ってよ
「この…、俺様ナルシスト!」
「はぁ?んだと凶暴サル女!」
――…あいつと結婚なんかするなって
要冬真が悪くないというのは、私にだって解ってる。
独りよがりだって事も。
でも、それでも精一杯の憎まれ口を叩かなければ気が済まない程傷ついていた。
傷ついた分、彼を傷つけてやりたい、そんな、浅はかな事を考えながら。
突然暴言を吐いた私にカチンと来たのか、先ほどの私と同じ様に自分の机を勢い良く叩いて立ち上がった要冬真は負けじと声を荒げた。
そんな言い合いから発展した喧嘩は、最早原因さえも周囲には理解出来なかったと思う。
だって、私が突然怒りだしただけなのだから。
「ウンコ!粗チン!いんきんたむし!でべそ!」
「てめぇ…ある事無い事…、ぶっころす」
彼だって、どうして私が怒っているのかなんて解っちゃいないだろう。
「ほ、ほら二人とも…授業始まるから…、先生困ってるだろ?」
戸惑いながらも私達の間に入り、喧嘩を止めに入った委員長の遠慮がちな言葉で我に返るまで、互いの罵倒合戦は続いたのだった。