生徒会長様の、モテる法則
大きな潤んだ目。
「ねーリン」
柔らかそうな髪も手伝って、彼はこちらの母性本能をくすぐる。
「おれと、結婚しちゃう?」
「は!?い、イヤだ!」
「ほらー、何となく迫られると動揺するじゃーん」
騙された!
悪戯をした子供の様に、彼は体勢を元に戻して笑ってみせた。
ほとんど変わらない身長、それなのに少し意識するような言葉を落とされただけで、動揺してしまう自分は、なんだか情けない。
「今のは、突然だったから」
慌てて弁解するように歩き出した私の後に続いたハルは、隣についてこう付け足した。
「でもさ、動揺しても何しても、自分の思った事ははっきり言う、それがリンの良いところ」
急に伸びた手に頭が掴まり、ゆっくり撫でられる。
子供扱いされた気がして軽く腹が立ったので、脇腹にパンチを入れてやった。
「ひどい!痛い!」
花壇に植えられたコスモスが、風に吹かれて揺れている。
最近、ハルが植えた花だそうで、時期を迎えて綺麗に綻んでいるようだ。
思えば、転校したてに話かけてくれたのは彼だった。
荒立った心をほぐしてくれるのは、毎回この能天気な声。
良くも悪くも、一番長い時間を共有しているのはこの男だ。
私の事を、よく解っている。
「だからさ、この際自分に素直になっちゃいなよ!」
「私はいつも素直です」
「うっそだー、そんなんじゃ後悔するよー!」
校門の前で、私たちは少し離れて立ち止まった。
ハルは右へ、私は深月さんの迎えを待たなければいけない。
タイミング良くやってきた黒塗りベンツが目の前に停止し、中から出てきた深月さんに元気よく挨拶をしたハルは、私に念を押した後、手を大きく振りながら去って行った。
あいつ…まじで生徒会の集まり行かない気か…?
明日怒られてもしらんぞ。
脳裏によぎった、要冬真の顔にまたいらだちを覚えて振り落とす様に首を横に振りながらも、開いた扉から車内に乗り込む。
「どうされましたか?今日は生徒会の集まりがあったはずでしたが」