生徒会長様の、モテる法則
予定を把握しきっており、尚かつそういう類いの仕事には絶対参加を強要する深月さんは、少しだけ渋い顔で私を見た。
くどいようだが、基本無表情だ。
腹が立つ程優秀な執事である。
私が、今日は生徒会の集まり出ないから普通に帰ってきます、とメールを送ってやったら、それに対する返信は。
“なにゆえですか”。
クエスチョンマークぐらい付けてくれ。
「あれだけメールでごねたんですからきちんとした理由があるんでしょうね」
深月さんは依然鋭い目をこちらに向けている。
返答次第ではヤル気だ。
「これ」
私は手に持ったままだった校内新聞を彼の膝の上に置いてやった。
深月さんは走り出した車内でそれを手に取り、一面を見て一時停止した彼は文字を目で追いながら言った。
「…、思い切った行動に出ましたね」
「でしょ、こんなの聞いてない。“結婚会見”って言い出したのは久遠寺くんだったけど、冗談だって言ってたのに。騙された」
「鈴夏様」
「何?」
深月さんは、新聞を綺麗に畳み私に手渡した。
備え付けられた送風口から出る微量の風が、彼の髪を揺らしている。
「恐らく、これを公にしたのは秋斗様ではないかと」
「どゆこと?」
「顔合わせの際の、秋斗様の発言を私以外に聞いていた方が居ます」
襖の隙間から室内を覗く深月さんを発見し、料亭からの帰りの車内で叱ったのが約一週間前。
『心配でしたので、見張らせていただきました』
「あの時、旦那様と秋斗様の付き添い人の方もいらっしゃいまして…」
『まぁ!お二人共いい感じですわね』
『ちょっと早いけど、秋斗くんの言うように“婚約会見”やってもいいね』
『パーティーなんてどうです?よい宣伝になりますわ!』
「おぃぃ!マジか!なんでその空気読めない二人を止めてくれないの!?私も久遠寺くんも結構戸惑い気味だったじゃん!」
「そうは言われましても、意見出来る地位ではありません」
「あんた私の執事だろ!フォロー入れろよぉぉぉ!」