生徒会長様の、モテる法則


深月さんの肩をガツガツ叩いて不服を表現してみるが、反応する様子はない。


無表情を決め込んだままの鉄仮面執事を睨み付け、私は車内で地団駄を踏んだ。



「和明さん」




バックミラーに映る優しげな瞳が、チラリと鏡越しに私を見すえたのを確認してから、前の座席の肩に乗り出す。

和明さん――運転手さんだ。



「はい」


「升条の本社に連れてって」


「かしこまりました」




視線を鏡から道路に戻した和明さんは、先に見えた交差点でハンドルをきって、ベンツを右折する車線へ移動させた。



「鈴夏様、何をなさるおつもりですか」



「ふん、深月さんはどうせあっちの味方なんでしょ?もう黙ってて」



「鈴夏様、そんな子供じみたこと言っている場合では…」



「嫌い」


「はい?」


「深月さん嫌い」




彼の真似をするように冷めた目で睨み付けると、無表情の顔が珍しく一瞬分かり易すぎるほど歪んだ。




「直接話してやるんだから」




長い時間を掛けて、説得する事も可能だと思っていた。
公にされた以上、会見だかパーティーだかが催される前に阻止しなければいよいよ後戻りは出来ない。


よくよく考えれば、深月さんだって升条の人間なんだから私の味方なんかしてくれるわけないのだ。

頼っていたって始まらない。



自分で道を切り開かなければ、前には進めないのだから。




「鈴夏様、到着しました」




闘ってやろうじゃないの。




全力で!





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