生徒会長様の、モテる法則
「…っぷ」
そんな沈黙を破ったのは、向かいで吹き出した義人さんだった。
「わかってるさ、そんなの」
シワの寄った目元が、私を見上げる。
「結婚さえしてくれればいいって、言っただろう?秋斗くんは、君の事大層気に入ってる、それに元々知り合いだったんなら、尚更いいじゃないか」
「よくありません!」
「なんだ、別に恋人でもいるのかい?」
恋人。
という言葉に、息が詰まった。
恋人なんかいない。
途端に言い返せなくなった私を見上げて、目元を細めた義人さんは用意された紅茶を口に含む。
背後にはかすかに執事の気配があった。
恋人は、居ない。
でも好きな人ならいる。
一方的な片思いだけど、私の中で確信めいた想い。
朝は、少しだけ卑屈になっちゃったけど。
嫉妬もするし、ワガママ言いたくもなる。
だけど。
「好きな人なら居ます」
「好きな人?」
私は自分を取り戻し、確かめるようにソファーに腰をかけると、それを見ていた義人さんは呆れたように笑った。
「好きな人か、じゃあ君の片思いかい?」
「そうです」
「それなら、関係ないね」
「え?」
「だってそうだろ?片思いなら尚更、関係ないじゃないか」
ガーン!
そうだった!
ただ自分の秘密を暴露しただけだった!
「今の恋は実りそうなのかい?」
優しげな声は、静かな部屋に溶けていく。
この恋は叶わない。
そんな事は分かっていたし、ここ数日で充分理解したつもりだ。
小さく横に首を振ると、満足そうに口元がつり上がった。
「なら、考えてごらん」
義人さんは、もう一度ティーカップに口をつける。
「叶わない恋の為に縁談を断り、秋斗くんとの関係は断ち切って、夏樹くんの所に戻り二人で路頭に迷うのと――…」
――…叶わない恋を捨て、秋斗くんと縁談を結び、夏樹くんの営むラーメン屋に時々顔を出すのとでは
「どっちがいいんだろうね?」