生徒会長様の、モテる法則
10-4 男達の仁義なき戦い
「こんな所に呼び出して、どうするつもりだ?」
ただでさえ、今日は機嫌が悪いと言うのに生徒会室から出た所で秋斗に呼び止められ連れてこられたのは屋上だった。
秋の心地よさと冬の寒さが漂う10月下旬。
ブレザーでも少し肌寒く、風もやや強めだ。
俺自身、屋上に足を運ぶことが少ない為扱いづらい場所でもある。
秋斗はフェンスに寄りかかって、中庭をジッと見つめているだけだった。
大きなソメイヨシノが見える景色に、いつもの栗毛の髪が映りこんでいる。
「今日、鈴夏さんと大喧嘩したんですって?」
春め、チクりやがったな。
腹の中で舌打ちをすると、金色の頭が遥か下でソメイヨシノに近付いていく姿が見えた。
慧だろう。
海の喜ぶ姿が目に浮かぶ。
「だいぶ辛辣な言葉を吐いたらしいですけど」
秋斗は縁の無い眼鏡をかけ直して、改めて俺を見た。
責めるような視線に一瞬身構えたが、それを跳ね返すように笑ってやる。
「あいつが、先に暴言吐いたのが悪い」
そうだ。
大体、祖チンってなんだよ。
粗末なチンコって事かふざけんな。
「いいんですか?心にもない事言って」
「なにがだ」
風で揺れる赤い髪を押さえて、秋斗は的を狙うように言葉を落とした。
「私と結婚するなんて、ホントは許せないくせに」
彼は、一瞬だけ強張った俺の表情の変化に、嬉しそうに口角を上げた。
性格が悪い、全部知っていると目で脅しをかけている。
「どうして、ちゃんと気持ちを伝えないんですか?」
耳元で、風が鳴く音がした。
一定の距離を保ってはいたが、信じられないほど鮮明に彼の声が鼓膜を刺激する。
それほど、脳が言葉に反応したのだろう。
「好かれている自信がないからですか?それとも悠海さんを庇った時のように自分が感情を露わにすると、鈴夏さんも同じように一人になってしまうとでも思ったんでしょうか」