生徒会長様の、モテる法則
勝った…、と内心ほくそ笑んでいると背後から凄まじい殺気を察知して一瞬息を呑む。
振り返るか立ち上がるか、どちらでもいい行動に移さなければ死ぬ、と直感した私の頭は、そのどちらもする前に何者かに鷲掴みにされた。
いや、“何者か”ではない、確実にアイツしかいないのだ。
「おい、俺様がこいつを探しに行ったの何時だと思ってる」
「今から…一時間前です」
私は時計をチラリと盗み見みながら今の時刻を確認した。
怖い。
心なしか頭がミシミシいっている気がする。
「なんでお前、白紙なんだ?」
周りの気温が、一瞬にして下がったのを肌で感じた。
「いえ、あの…うちのクラス、演劇なにやるんだろうなぁと…思ってたら、」
「たら?」
「…」
「…」
「すいません」
「ハッ、わかればいいんだよ、わかれば」
ニタリ、と笑った音がした。
恐ろしくて振り返ることが出来ないが、奴はとても楽しそうな顔をしていることだろう。
悔しい、悔しすぎる。
しかし、こればっかりは仕事を出来ていない私が悪いので反論することも、飛び蹴りを食らわすことも出来なかった。
扉が開く音がして、奴が出て行くのを耳だけで確認してから、目だけで向かいのユキ君を見ると、ほら言ったじゃないですか、と私を目で責め立てている。
「ねーねー」
何故か一触即発のような変な空気が流れ、私とユキ君が見つめ合って…いや睨み合っていると膝の上で様子を伺っていた海ちゃんの頭が動いた。
「リンちゃん先輩は、トーマのこと嫌いなの?」
私は、突然核心を突かれたような質問に目を丸くした。
彼女は、あくまでも真剣に純粋な瞳をこちらに向ける。
そんな風に見られて、嘘はつけない。
「大嫌いっす」