生徒会長様の、モテる法則
玄関前で立ち尽くす私と、ニュースを傍聴する彼。
いやいやいや。
何?
「鈴夏さんも立ってないで座ったらどうです?」
こんな広い部屋、落ち着かない。
入って直ぐの広い空間は、何やら一つではないようでその部屋の中心までくると、奥にもう一つ部屋があるのが分かる。
恐る恐る覗くと、キングサイズのダブルベッドが見えた。
――…なにゆえ
見事深月さんの口癖が移った所で久遠寺くんを振り返ると、部屋の真ん中のソファーで完全にリラックスしている。
「なんでそんな隅に座ってるんですか」
「いや、植物のマイナスイオンと隅っこが好きなもんで」
隅に飾ってある観葉植物の隣で体育座りをしている私を見かねたのか、長い指先がヒラヒラと手招きをした。
「ソファーに座ったらどうですか?」
オフホワイトの長いソファー。
テレビに面して平行したそれは、途中で直角に曲がりLの字を描いていおり丁度その角に、クッションが置いてあったのでそれを抱きかかえて腰を下ろした。
「覚悟は決まりましたか?」
不自然に空けられた距離を気にする様子もなく、久遠寺くんは私へ視線を投げる。
「覚悟って…、そんな大それたもんじゃないし」
逃げるように背を向けて、膝を抱えると肩に強い衝撃が走り体が倒れ背中をソファーに打ち付けた。
柔らかいため痛くはなかったが、思わず瞑っていた目を恐る恐る開くと、上から覗きこんだメガネの奥と視線が絡み合う。
「今日ここに呼ばれた理由分かります?」
優しく奏でるような声に、一瞬張り巡らされた警戒心が緩み、いつもの調子で悩み始めると久遠寺くんはゆっくり立ち上がり、ソファーで横になったままの私の前に立った。
「アナタのおじいさまがね」
彼の声が一瞬ブレたのは、私を抱えあげたから。
「どうせ結婚するならと」
広い部屋を抜け、視界に飛び込んできたのは先ほどの大きなベッド。
宙に浮く感覚と、柔らかい背中の衝撃はソファーと比べられないほど体が沈んでいく。