生徒会長様の、モテる法則
相手が誰だか解らない状態で渡された携帯電話をそっと耳に当て、向こうの物音を聞いた。

シン、と動く様子もない沈黙に、もしもし、と声をかけてみる。


しかし返事はない。



「…えーっと…もしもし?」




携帯電話を耳から外し、画面を確認してみると未だに通話中のカウントは刻まれている。


「あの、えーっと…」



『おい』



もう一度、と駄目押しの問いかけは途中で強く痺れるような声に遮られた。


声だけで、誰かなんて明白だ。


昨日の喧嘩の余韻を手伝い、やや低く返事をすると、相手もイライラしただろう空気が電波を通じて伝わってくる。

無言の時間が暫く続いた。


『お前』


「え?」



『お前秋斗とそんな所でなにやってんだよ』


「なにやってるって…」

何となく顔を上げると、体勢が変わらぬままの久遠寺くんがこちらを見下ろしており、目が合いニコリと微笑みかけられる。

まだ私の上に跨ってたか!
早くどけ!


――…久遠寺くんに押し倒されてまーす!


明るい自分の声が脳裏を過ぎった。


いやいやいや!アホか!んなこと言えるかコミカルに!
アホだろ笑顔でザラキ唱えるより不吉だわ!



「か、カバディ!」


『はぁ?』



要冬真の、怪訝に歪む顔が容易に想像出来る。




「カバディやってた!」


『なんだよカバディって』



食いついてきたー!


そこは“なんだカバディか”だろうが!
空気を読め!


「カバディって言い続けながら逃げるみたいな…」



『そんなことやってんのかスイートルームで。俺はてっきりセックスでもしてるのかと思ったぜ』




「なっ…!誰がそんな卑猥なことするかバカが!」






“後悔するよ!”



“生徒会長の事、好きなんやろ?”


“一緒だよ、副会長のモノになるのも、僕のものになるのも”




沢山の人の言葉が一気に脳内に流れ込んでくる。
その息苦しさに息を吸い込んだ。




「私は、あんたが好きなんだから!バカ!ナルシスト!俺様!」


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