生徒会長様の、モテる法則
「はい、鈴夏さんそこまでです」
携帯電話に正面きって文句を散らしていると、上から手から伸びてきて罵倒相手を取り上げられた。
「わああ!待って!私の罵倒ターンは始まったばかりなのに!」
起き上がり携帯電話を取り返そうとしたが、頭を押さえつけられベッドに体が沈んでいった。
久遠寺くんは床に足を下ろしてベッドに座り、右手で私の頭を、左手に携帯電話を持ち何やら楽しげに会話している。
やがて左手を下ろして携帯電話を切ると、掴まれていた頭をとかすように撫で私をまた覗きこんだ。
「自分の気持ち、伝えることが出来て良かったですね」
目を細める彼は、いつもの紳士的な微笑み。
「これで心おきなく私と結婚出来ますね」
―――…ん?
「アナタはその辺踏ん切りがついていなかったようなので」
右肘が私の顔の真横に置かれ、いつも通りだったはずの距離が一気に近付く。
鼻と鼻がついてしまいそうだ。
ちょっ…!待て待て!電話前の雰囲気になっちゃったよ、私の意を決した断りの言葉完全スルーされてるけど!
「カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ…」
カバディ言っている間私は無敵!
と思いつつ息継ぎなして呪文を連呼してみたが、残念ながら今やっているのはカバディではない。
最悪蹴り飛ばすつもりだったのだが、睫毛の瞬く音に驚き目を瞑った。
「…?」
しかしいつまでも私の体に何かが触れる様子はなく、不思議に思い目を開けようとすると、目の前にあった気配がゆらりと動き額に冷たい感触が走る。
キスされていると気付いた時には、すでにベッドが軋んで軽くなった後。
反動をつけ起きあがると、ベッドルームの入り口の柱に触れたまま、彼がゆっくり振り返った。
「私もそんなに野蛮じゃないです、今日は勘弁してあげますよ。ソファーで寝ますから、鈴夏さんはベッドを使ってください」
おやすみ、と声を掛けられしどろもどろに返すと久遠寺くんは部屋の奥へ消えていった。