生徒会長様の、モテる法則



「旦那様の御命令でしたので」


触るな、と言う威嚇が通じたらしく約数センチの所で彼の手が止まり、仕方なしに離れていく。
腰を上げた為結んだ長い髪が砂の様に後ろへ流れていった。



「アナタの中で私<旦那様ですかそうですかハウス!!!」



ビシィっと人差し指を上げると、深月さんが若干驚いて鉄仮面が歪んだ。
数秒間睨み合っていた(深月さんは私を見ていただけだが)が、彼は小さく溜め息をついて私に背を向ける。


扉を開け、閉め際に「外におりますので何かあったらお呼びください」と言う言葉を残して消えていった。

ノブが戻る音が室内に響き、また私は一人。

広さにして八畳ほどのこの部屋には、椅子の他にソファーが置いてあり正直そちらに座りたいがワンピースが崩れるからと却下された。
それと対になった低いテーブルには花束が沢山、どうやら祝いのモノらしいが私には不吉な死の花に見えるわけで。



“鈴夏ちゃんは、座ってニコニコしてるだけでいいからね”



朝会った義人さんに、まるで暴れる子供を抑止するとも取れる発言をされ、軽く腹が立ったのを思い出した。

なんだいその腫れ物を扱うような感じは。

だったら無理やり結婚させんじゃねーよ!


私は隣にあったもう一つの椅子をガンガン叩いて怒りを分散させてから、急に虚しくなって溜め息をつく。
なんか、カメラとかでパシャパシャ撮られるんだろうな…。


この部屋の唯一の窓から、雲が一つもない青い空が見える。



あの窓から逃げられるかな。



そんな事をぼんやりと考えていると、扉をノックする音で我に返り私は慌てて返事をした。


ゆっくり降りたノブを見ながら、入ってくる相手を確認しようと目を細める。

ドアの開いた音と同時に現れたスーツの男に、私は息が止まりそうになるほど驚き思わず数回咳き込んだ。






黒いスーツ姿の、ナルシスト、生徒会長。


私の中で沢山の肩書きがある男。
昨夜の告白と罵倒を思い出し自分の顔が青ざめていくのが手に取るように分かった。

つうか、なんでいるの?


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