生徒会長様の、モテる法則
要冬真は、扉と向かい合わせに座る私をマジマジと上から下まで物珍しげに観察してから、ニヤリと口角をあげた。
「馬子にも衣装」
「ゴルァ!どういう意味だ!」
「意味知らないのか?」
「知ってるから怒ってるんだよ!」
いきり立って立ち上がった自分が恥ずかしくて、鼻を鳴らしてから乱暴に椅子に座り直した。
扉を閉め、彼の気配がこちらに近付く。
私は昨日の気まずさもあり目を逸らしたまま、腕を組んだ。
「なにしにきたのよ」
吐き捨てるようにそう言うと、逸らしていた顔を顎から抑えられ音が鳴りそうな勢いで正面に向きを直された。
「招待だ。当然だろ」
顎に触れていた手がゆっくり離れ、涼しい顔をした要冬真が此方を見下ろしている。
その大きな目に絡めとられ、ドキリと心臓が跳ね上がった。
黒くてサラサラの髪、長い睫毛、艶っぽい口元、喧嘩したのを最後にたった1日会わなかっただけだ。
なのに彼そのものが酷く新鮮に見える。
「今日はお前に言いたい事が3つあってな」
結婚のスピーチか。
いや、こんな傲慢に押し付けられても嬉しくないし。
「婚約オメデトウ」
「そりゃあどうも」
一瞬だけ、顔が歪んだのはバレなかっただろうか。
誤魔化すように眉を顰めれば、要冬真が笑ったのが分かった。
つうか昨日告白したじゃん!ほぼ悪口だったけど!
イヤミか!遠回しに断ってるのかコノヤロー!
「で2つ目」
静かな部屋で、流れる時間の音が一瞬聞こえた。
「謝れ」
「…、は?」
「一昨日俺の事粗チンって言っただろ、謝れ」
祖チン?
祖チンって…。
「粗末なチン…痛っ!今までで一番スナップ効いてんじゃん!イテーよバカ!」
「てめぇ見たこともないくせに適当な事言ってんじゃねーよ!」
「そんなに心外か!なに?ビッグマグナムなんですか?知るかんなもん!」
私はいつの間にか椅子から立ち上がっていて、お互いに睨み合ういつものような下らない喧嘩になった。