生徒会長様の、モテる法則
いつも通りに接してくれる彼に、私は嬉しく思いながらも、これ以上どうにもならない現実を突きつけられた気がして少し虚しくなる。



「言ったな、今ここで見せてやろうかクソ女」




心の奥隅で感傷に浸っていた私は、要冬真のとんでもない発言ではじけるように目を剥いた。
ヤツは真顔でズボンのベルトを外そうとしている。



NO!
そんなモザイクモン見たくないわ!



「バカやろー早まるな!」


怒りで我を失い下半身を露出しようとしている要冬真の懐に飛び込んでいくと、それを阻止するようにベルトを掴んでいた右手が、私の腕を捕まえる。
不意に香った香水の香りに顔を上げると、ほぼ距離がゼロになった彼の首元が見えた。


心臓が痛い。


体中が、体全体で緊張して喉が乾くぐらいの熱を帯びていくのが分かる。


「3つ目」



見下ろされた黒目がちな強い眼差しに、とうとう息をするのを忘れてしまった。

近い。




「好きだ」




口元があまりにもゆっくり動いたものだから、頭の中でその言葉の意味を理解するのにとてつもない時間を要した気がした。

まだ、心拍数は平常心を保っている。

返す言葉も、状況も、なにもかもがぐちゃぐちゃになったまま息をするだけの屍になった、いや、石になった、だろうか、もうそんなのどうだっていい。




意味が分かんない。





「お前の事、好きだって言ったんだよ」





二人だけの部屋、10月下旬、それなのに体が熱い。
息苦しい、もう、この部屋に酸素は殆どないのではないかと思う程。
死んでしまう。
二度目の彼の言葉に、ようやく反応したのか血の様に吹き出る脳内物質が心拍数を急激に上げて行く。
一生に、心臓の拍動する数は決まっているというが、それなら、私はもう間もなく死ぬだろう。


「ちょ…、ちょっと、待った!」


息切れをしながら、状況を把握する為に無理矢理要冬真から距離を取ると、混乱した私を眺めながらも距離を詰めようとはしない彼が楽しそうに笑った。


「なんだ?」




優しい距離、優しい声。





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