生徒会長様の、モテる法則
「だって、さ、私と久遠寺くんは運命?なんかよくわかんないけど、私のアルバムの中で初恋は実らない男“くそナルシスト生徒会長”として名前が刻まれた訳でね、だから、」
「だから?」
「…っ」
言葉の端が捕まった。
いとも簡単に。
混乱していながらも、いいようもない幸福感が自分の中を支配しているのが解る。
ああ、海ちゃんもユキ君が迎えにきてくれた時こんな気持ちなんだろうか、とか、右京はこんな気持ちで彼女を見ていたのか、とか。
溢れ出す、生温い感情に胸が締め付けられ少しずつ落ちて行く。
「運命?」
鼻で笑う要冬真の言葉。
「お前とあいつが“運命”なら」
沈黙に響くその声は、何度だって私を揺らす。
「あいつからお前を奪うのは俺様の“宿命”だな」
大きな瞳にかかる長い髪が揺れて、ずっと好きだった彼の手が私の目の前に差し出された。
その奥から覗く強い光に息をするも忘れ、音も聞こえない程に全身で鳴り響く心臓が苦しい。
目の奥から溢れ出そうになる喜びを隠す様に、目を閉じる。
「お前は俺が好きなんだろ?だったら遠慮しねぇ、全力でお前を手に入れてやる」
差し出されたその手に触れても良いのだろうか。
指先が痛い、痺れる。
まだ彼に触れても居ないのに、毒にでも侵されたようだった。
「言っただろ?“お前が俺を愛した分、俺がお前を愛してやる”って」
最後の数センチは、彼が強引に私の手を引き寄せ一気にゼロになった。
しっかりと握りしめられたその手が、熱い。
その瞬間走り出した要冬真が向かったのは、この部屋に一つしかない大きな窓だった。
鍵を開け全開すると、少し肌寒い空気が一気に部屋に入り込む。
要冬真は振り向き様に私の体を抱えて、窓の縁に足をかけた。
え?
「ちょっ…待ってなにすんの?」
「何って、逃げるんだよ」
「え、窓から?」
「正面切って逃げろってか?無理だな、警備員が山ほど居る」