生徒会長様の、モテる法則
見事に横抱きされたまま、しれっと真顔でそう言った要冬真はそこから飛び降りようと、いよいよ外へ乗り出した。
「だ、だめっしょ!怖いし!」
「アホか、お前初めて会った時二階から飛び降りてただろ、今更じゃねーか」
「一人と二人は違うでしょ!?せめて一人ずつにして!怖い!」
「うるせー」
むすっとして、私から視線を空へ移した彼は無駄な動き一つせず窓から飛び出す。
せめて、合図くらいしろ!
自分で飛び降りるのと、体が浮いたまま落ちるのではこんなに違うとは思わなかった。
胃が口から飛び出そうになり思わず口を両手で覆う。
ヒヤリとする浮遊感は、体を逆立てて痛い。
あー、ホントに今日中に死ぬんじゃないだろうか。
「ひぃっ!」
口腔内で響き渡った叫び声は、着地した衝撃で少しだけ外に漏れた。
「手に入れたもんを、今更離すかよ」
えー!そういう意味じゃないし!
物理的な問題であってね、精神的な問題ではないよ!これは!
ダメージを少しも負ってない要冬真が私を見下ろし満足そうに目を細める。
そのあどけない笑顔に、ドキリと心臓が跳ね上がるのが解った。
あ、今日死ぬわ。私。確信した。
「突っ立ってる暇はねぇな、走るぞ」
「え?」
背後で聞こえた物音に振り返る暇もなく、今度は俵担ぎをされ綺麗に整備された庭を走り出した。
なんでこいつは横抱きと俵担ぎしかしらんのだ!
風を切る音と草の擦れる音。
物音の正体はどうやら見回りをしていた警備員だったようで、私たちに気付いて追いかけてきている。
「ちょっと、追いかけられてる!」
「ちっ、仕方ねぇな」
慌てて近くにあった要冬真の背中をバシバシ叩くと、仕方なしに振り返り警備員の人数を確認してから、周囲に響き渡るような指笛を吹き鳴らした。
えー!何!ドラゴンでも来るの!?
ドラクエ仕様なら警備員どんどん来ちゃいますよ!
「鈴夏さーん!」