生徒会長様の、モテる法則



そんな中、一人毅然とした態度で立ち上がり一礼をしたのは今日の主役・久遠寺秋斗。


司会者も慌ててはいないようだ。
計画されていたかのように司会者からマイクを受け取った彼は、立ち上がったまま、スピーカー音と共に口を開いた。



「“今回は、この様な場にお集まりいただき、誠にありがとうございます”」



副会長の落ち着いた声にざわめきは消え、会場は静まり返る。
プログラムだと、まずはじめに二人の婚約発表を彼の口から、その後両社のプロジェクト担当から“新プロジェクト”の発表があるようだ。

両社のプロジェクト担当の一人は久遠寺秋斗、もう一人は升条基鈴【モトスズ】、升条の方は鈴夏の母親の兄らしい。




――…副会長もやるもんやなぁ、あの若さで




「“プロジェクト発表の前に、私の方から大事な発表があります”」




いよいよだ。
前の方に座っていた升条の社長が満足げに微笑んでいる。

やっぱり、失敗したか?



副会長が入ったと同時に入ってこないからと言って、居ないと決まったわけではない。
万を持して登場するというパターンはあり得るわけで。




「“予定をしておりました婚約会見ですが、中止になりましたのでお知らせします”」




スピーカーから聞こえた彼の声に迷いはなかった。
再びざわめく会場、何より驚いているのは副会長と司会者を除いた両社のスタッフ。


「“皆様”」



機械ごしでも分かる彼の鈴を鳴らすような声が会場に響き渡り、あまりにも大人びたそれに空気が止まるような錯覚を覚えた。


「“私の話を聞いてくださいますか”」




誰一人声を出せない状況を見回して、彼は続けた。



「“私は、運命を信じています。何故なら偶然にも、惹かれた女性が決められた婚約者だったからです”」




屋上で盗み見た光景が目に浮かぶ。
だから尚更、凛として背筋を伸ばしマイクを持つ彼の姿に胸を締め付けられた。


「“それでも彼女が笑わないのなら、運命に背くこともまた、運命だと思うのです”」




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