生徒会長様の、モテる法則
視線は、私とハルを恐怖に震え上がらせた。
結局、それ以降彩賀涼華が気になってロクな会話もせずに不本意ながら授業に参加する羽目になり、私はシャープペンを握り直す。
ちらりとハルを見ると、もう話し掛ける雰囲気ではない。
普段ふざけている分、彼は集中しだすと本当に真面目だ。
ノートの欄外に落書きするのは、私と話している時だけ。
ふと、彼の後頭部の寝癖に興味が移り私は顔を上げた。
「!!」
見てる!!!
ハルの後頭部の後ろから、ビームが出そうなほどな二つの目。
要冬真のビームとは少し質が違うが、それでも一直線に此方に向けられていた。
あの大きな目、柔らかそうな髪、後ろの窓からは散り始めた桜の花びらが見える。
ここで私が男の子だったら、トキメクかもしれないと思った。
しかし生憎私は女だし、あれは熱視線ではなく監視の目だ。
彼女は、それ位隠す素振りもなく、授業中だというのにジッと私を見ている。
―…視線は感じてたけど、あんなガン見かよ!
授業受けろよ!
ガッツリ真横見てんじゃんあの人!!
女性は男性より怖いというが、それを実感した瞬間だった。
とりあえず、あの子を見ないようにしよう
私は、グリっと頭を動かして彼女の視線から逃れるように黒板を見る。
授業はいつの間にか教科書三ページ分進んでいた。
黒板に集中するフリをしても視界の隅には彼女の顔が見える。
おいおい、無駄話をやめて授業に集中しはじめた私を監視するな。
とりあえず教室に溶け込んでるんだから注目するな。
それもこれも…、あいつのせい!!!
私の二つ前で優雅に授業を受けている黒い後頭部を睨み付けた。
書記になって数日、奴の欠点を模索したが見つかるのは長所のみ。
いや、性格の悪さは永久欠番なので除外だ。
成績だとか運動神経だとか、何をやらせても完璧。