生徒会長様の、モテる法則
か、可愛い…!
いや何がって目覚まし時計のデザインもそりゃあ確かに可愛いが、なんて言ったって深月さんが!
こんなファンシーな目覚まし時計どこで売ってたの、どんな顔してレジに並んだの、やっぱり無表情なのって!
まぁ脳内を駆け巡る思考はやや混乱気味だが、それが顔に出ていたのか深月さんはまた嫌そうに顔を歪めた。
どちらかというと、照れているようだ。
そんなジトッとした視線に空笑いを送り、改めて箱の中を覗く。
彼に形のあるものをプレゼントされたのは初めてだ。
これはきちんとお返しをしなければいけない。
何のしきたりかは知らないが海外の風習を重んじてプレゼントを用意した深月さん。
正直私の誕生日はまだ先だし、全く心当たりがないわけだが断るのは無粋というもの。
目覚まし時計一つじゃ起きることが出来ない私の為に恥をしのんで買った(かもしれない)わけで。
「ありがとう」
素直にそういうと、彼はやんわりと表情を緩めた気がした。
「その目覚まし時計なんですが」
「ん?」
しばらく沈黙していた食卓に、色の殆ど無い深月さんの声がポタリと落ちた。
「何でも絶対に起きることが出来るという代物で」
そりゃすごい。私にピッタリじゃないか。
「一度目のベルで起きなかった場合、お経が流れはじめ運が悪いと天に召されるという…」
「お経!?」
こら!んなもん私に寄越すな!
「この時計で起きなかったものは居ないと言う売り文句に惹かれまして」
いやいや!
売り文句っつうか殺し文句だよね?それ!
文句を言ってやろうと顔を上げて、奇怪なプレゼントの贈り主と視線が交わる。
その瞳があまりに純粋で真っ直ぐだったものだから、私は何も言い返せずに喉元まででかかった言葉をゆっくり味噌汁と流し込み、出来るだけ自然に笑った。
「こ、これでもう寝坊しないね…深月さんの家に毎朝ご飯食べに伺うよ…」
会わせられない視界の隅で、彼は満足げにしかし無表情で頷いた。