生徒会長様の、モテる法則


「こ、コンニチハ…」


待ってねーよ、帰ろうとしてんのが分からんか!!

扉を開けた主・憎き幼なじみ葵は爽やかにかつ豪快に私の腕を掴み、そのまま歩き出した。

腕を引かれて逆戻りする私を彼の後ろに居た灰色の頭が多少驚いたような目で捉えてから、これまた嬉しそうに笑う。



「鈴夏久しぶりやな」




「はぁ」


元々校舎が広い梶谷学園において同学年だろうが校内ですれ違ったり遭遇することは稀だ。
私達A組と彼らH組の教室は廊下を歩いてほぼ向かいにある為さらに会う確率は低くなる。


あれ以来女遊びをしなくなったらしい右京と、撲殺天使葵は昼休みになるとこうして屋上にやってくる事は知っていたのであまり近付かないようにしていた。

ただこんな寒い季節でもわざわざ屋上に来ているのは多少不可解であるが。




「あーあ、つかれた」



腕を掴んだまま、葵は丁度日が当たる暖かい場所で腰を下ろした。
その勢いで地面に尻餅をついた私の隣に右京が何気なくアグラをかく。


あれ、なんで3人で雑談する構図になってるわけ?




「ちょっと、葵離しなさいよ」


「なんで?」




なんでじゃねー!!


てめぇらと一緒に居たくないんだよ!




「まぁまぁ、俺も葵も疲れてん。癒やしてくれや」



「そんなのマイナスイオン出す機械に頼めよ」




「いややわぁ、学生身分でそんなん買えるわけないじゃろ。もうバレンタインとか散々やわ」


右京は盛大にため息をついて、足早に流れていく雲を目で追っている。
地面についた両手の右側には赤いゴムがついていて、今日は前髪を結んでいない。


バレンタインという言葉にハッと我に返り、掴まれた腕の先に居る男が誰だか思い出した。


葵に何かモノ要求される…!




恐怖!




腕はそのままに無理やり立ち上がろうと膝を立てると、分かっていたかのように葵が力の限り手を引いたため私は逃げられることなく体ごと地面に叩きつけられた。


「いだっ!あんた何す」



「トリークオアトリート」




「は?」



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