生徒会長様の、モテる法則
た、助かった…!
「つまんないの」
葵は面白くなさそうに腕を組んでそっぽを向いた。
私は早速袋に手を突っ込み、多めにチョコレートを掴んで二人に配る。
それでも有り余るほど、袋は重い。
「ありがとさん」
右京は手のひらで転がるチョコレートを眺めながら私に顔を上げ、嬉しそうに目元を細めた。
よくわかんないけどハルGJ!
あんたの気遣いがマックスハートで役にたってる!
心の中で親指を立てながらも、さっさとコノ場を離れようと立ち上がると、右京が思い出したように私の腕を掴んだ。
「ちょい待ち、鈴夏」
此方を見上げる右京の表情はいつになく真剣で、少したじろぎながらも体を向き直す。
「どうせなら、“あーん”してくれや」
「…」
「うお!なんやそのピストル!銃口をこっちむけんなや!」
「あんたの発言に対する正当防衛だ」
「うっちゃんアホでしょ」
「ぎゃぁあ!葵!輪ゴムは地味に痛いんやて痛っ!」
ハルに貰ったオモチャのピストルの銃口から玉が飛び出す前に、向かいで葵が飛ばした輪ゴムが右京の頬にクリティカルヒットした。
その痛みで私の腕を掴んでいた彼の手が緩む。
「ったく…冗談やのに…」
不服そうに頬をさすりながら右京はもう一度私を見上げた。
「俺らがここにおるんは、秘密にしといてや」
「え?…うん」
「あと“代わりに渡しておいて”っつーのも無しやで」
なんで?と言いかけた口が右京の言葉でようやく意味を理解し、ゆっくり閉じられた。
そうか、この人達もモテるんだ。
不本意だが、それは認めざるを得ない事実である。
きっと要冬真ほどではないが…。
「別に笑顔で受け取っておけばいいのに」
「僕は好きでもない女に貰って媚びうる主義じゃないからね」
そう言えば昔、天使のような笑顔でやんわりと紳士的に断っていたのを目撃した気がする。
「へー」
猫被りめ!
「(相変わらず鈍感やなこの娘)」