生徒会長様の、モテる法則
sp-5 高速落下
あの二人はどうやら女子達のチョコレート攻撃から逃げる為に屋上に逃げてきたようだ。
『別に俺は大歓迎なんやけどなぁ、葵が嫌がんねん』
右京も葵のワガママに付き合わされてるようだが、本人はそれが好きなようなのでもう何も言うまい。
私は屋上を出て宛もなく階段を静かに降りていた。
『好きでもない女に貰って媚びうる主義じゃないからね』
葵の何気ない言葉が、どうしようもなく引っかかる。
「好きでもない女…ね…」
アイツがそういう風に断ってくれたら…
「いやいや!べ、別に私以外の子から貰って満更でもない感じなのに腹立ってるわけじゃ…」
…。
「…はぁ…」
もう疲れた。なんもしてないのに。
私ってこんな子だったっけ。
ウジウジしたり、ヤキモチやいたり。
辺りを巻き込むような大きな溜め息を一つ。
ただ自分が用意出来なかったからって、そういう風に思うのはよくない。
ビニール袋に入ったまま転がるチョコレートとピストル。
…、ていうかこのピストル結局何?
『人に向けて撃っちゃダメだよー』
階段の踊場で立ち止まって、先程右京を脅したばかりの拳銃を取り出し、まじまじと眺める。
まぁ、普通に考えて警察が持っている危ないものではないだろう。
しかし教室から出るときに残したハルの言葉が気になる。
「うーん」
私が拳銃を横から眺めて首を傾げた瞬間だった。
背中の一点に強い衝撃を感じて同時に体が投げ出され喉元を通り過ぎる浮遊感で息を呑む。
マズいと思った時にはもう遅く、下り階段が浮いて体が前に傾いた。
「うわっ!」
素早く場所を見極めて片手を段に付き、一回転して体勢を整える。
段差になっている所へなんとか足を付き上を見上げると、まさか綺麗に着地すると思っていなかったのか、私が立っていたその場所で狼狽える女子数名。
「恨み晴らさずにおくべきかぁぁぁぁ!」
私は地面を蹴飛ばして逃げ出した彼女たちを追いかけた。