生徒会長様の、モテる法則



私は寒さから閉め切られた窓を勢い良く開けて、サッシに足をかけた。




「あーはっはっは!あばよ!」




あれ、どっかで聞いたセリフ。
デジャブ?
大きな窓に沿って生える大きな木の枝に飛び移ろうと思うんだけど、あれなんかデジャブですかね?


右足をかばいながらジャンプして、太く伸びた枝に飛びつく様にして両手を伸ばす。

体は宙を舞い、手のひらはしっかり枝を掴んだ。




よし!

完璧!!





枝にぶら下がった状態で、ガッツポーズ。
ここまで来る事は出来ないはずだ。
私の勝ちだわね!



「ふはははっはは!私のか」


「なにしてるんですか鈴夏さん」


「え?あれ?」



何処からか聞こえた鈴のような声は、誰だかすぐ分かる。
久遠寺くんだ。
しかし、どこにいるのか分からない。
キョロキョロ辺りを見回しても生徒らしき人物は見当たらないし、窓越しに誰かが見ている訳でもなかった。


「下ですよ下」


「あ」



声に誘導される様に真下を見下ろすと、こちらを見上げる久遠寺くんが小さく手を振っている。



「何してるんですか?野生にでも帰るんですか?」

「野生ってあんた!」


久遠寺くんまでもが、私をゴリラ扱いするというのか。
失礼な。
よくよく思い出してみれば一番初めに転校してきた日に、要冬真から逃げる様に廊下を走り窓から逃げ出し、木の枝に足を滑らせて落っこちた、同じ場所だった。


ここは、久遠寺くんの読書場所なのだ。




「あれ、何か地面遠いんだけど」



「当たり前じゃないですか、貴方三階の窓から飛び出してきましたよ」



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